「ジタン……?」
いつもと様子の違うジタンに気づき、怯えた。その彼女を抱きすくめながら、ジタンはなお問う。
「あいつと、何話してたんだ?」
ガーネットは怯えた。いつもと様子の違うジタンが恐かった。
「なにって……とくには、何も話していないわ」
本当のことだった。たいそうな話なんて、なにもしていない。
「彼、昔、マダイン・サリにいた頃の友達に、そっくりなの。それで……」
言いながらガーネットは、はっと気がついた。
それで────……自分はどうするつもりなのだろう?
似ているだけで別人の彼と、思い出話でもするつもりなのか。
彼と面影を重ねて、どうしようというのだろう。
「召喚士の生き残りは、おまえとエーコだけだって聞いた。あいつは、別人なんだろ?」
「っ……」
そう、別人だ。アルクゼイドであるはずがない。
でも、似すぎているせいで、錯覚した。彼は生き延びていたのではないかと。期待した。
いいえ……まだ、わからないわ。
彼もあの嵐の中を、生き延びたかもしれない。生き延びて、なにかいきさつがあって、この大陸に来て、この屋敷に引き取られたのかもしれない。
確かめたい、とガーネットは思った。本当にコウジュはアルクゼイドと何も関係がないのか。
「ガーネット。あいつにはもう、近づくな。あいつは、おまえを──玉座を狙っているイララ・クシュハルトの息子だぞ」
その言葉にガーネットは無言で首を振った。
ジタンは顔を歪める。だがジタンの胸に顔を押し付けた格好のガーネットは、それに気がつかない。
「彼に確かめてみるわ」
「ガーネット!」
「彼に、もう一度会ってみる」
強く言った。
確かめたい。彼は何者か。
抱きしめる腕にいっそう力がこもった気がした。
「……っ勝手にしろよ……!」
絞りだすような声で言ったかと思うと、ふっとぬくもりが離れた。
ガーネットを放し、ジタンは身を翻して、さっと窓から出て行く。
「ジタン!」
呼んだが、もうすでにジタンは視界からいなくなってしまっていた。
「…………」
……怒ってしまったのだろうか……?
違うのに。確かめたいだけなのに。ジタンを怒らせたいわけじゃないのに。
「……ジタン……」
ガーネットはしばらくその場で立ち尽くし、ジタンが出て行った窓を見つめていた。
が、しばらくすると思い立ったように顔を上げ、夜着の上からストールを掛けると、そっと部屋から出て行った。
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